光には波動性(電磁波)と粒子性(光子)の二重性がある。その一粒一粒の光子を発生させることができれば(単一光子源)、 例えば、インターネットなどの光通信において、第3者が盗聴しようとしても確実にその痕跡が残るために、送受信者に気付かれずに 盗聴することは不可能となり、セキュリティーが完全に確保された通信システムが可能となる。この技術は量子暗号通信と呼ばれ、 世界中でその研究開発が進められている。 我々は、1個の量子ドットからの発光を単一光子源へ応用することを進めている。量子ドットの作製技術としては、個々の量子ドットを 発光素子構造に組み込むために、良質な量子ドットを低密度に作製する技術が必要となる。通常の自己形成法による量子ドットの精密な 低密度成長は困難であるため、本研究では、成長原料の分子ビームを断続的に供給することで表面状態を精密に制御し、超低密度のInAs量子ドットを 高い制御で作製する技術を開発した(ref.1)。 この手法で作製したInAs量子ドット層をフォトリソグラフィーと異方性エッチングによって数μm角に切り出し、さらに量子ドット層の上下には 半導体多層膜および誘電体多層膜のブラッグ反射層を形成したマイクロ共振器構造とした(電子顕微鏡像)。このピラミッド状のマイクロ共振器構造の 最も狭い領域に数個の量子ドットが内蔵されており、単一の量子ドットからの発光を取り出すことに成功している(ref.2)。 現在、アンチバンチング測定による単一光子発生の確認実験および取り出しの高効率化を進めている。
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